第190章

藤原京也は取り合わず、ただ俯いて、指の腹で翔太の頬に残る涙の筋をそっと拭った。

『怖がるな。俺がいる』

言い終えると、子どもを背後の人間に預け、ひとつ、またひとつと歩み寄る。纏う空気が、目に見えるほど冷えていく。

安野香苗が駆け寄り、野原正也の腕から翔太を受け取って、きつく抱きしめた。胸の奥に渦巻くものは、言葉にできない。

『データが欲しいのか?』

藤原京也はマスクの男の前で足を止めた。見下ろす瞳に、熱は一滴もない。

『選ばせてやる』

ゆっくりと足を上げ、男の手首に乗せる。そして――じわり、じわりと踏み潰した。

『バキッ!』

『あああああっ!』

喉が裂けるような悲鳴。背中...

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