第24章

「わざと怒鳴ったんじゃない」

藤原京也は唇をきゅっと結び、どこかぎこちなくそう言った。

「分かってる」

安野香苗は俯いたまま、彼の目をまともに見られない。

車内に、すっと静けさが落ちる。残るのは、互いの呼吸の音だけ。

藤原京也はヨード液の染みた綿棒で、安野香苗の傷口をそっと拭った。横目で何度も彼女の表情を盗み見て、力加減が少しでも強くなって痛ませないか、神経を尖らせているのが分かる。

手当ての仕草は不器用で、慣れていないのがありありだった。

当然だ。かつて藤原グループの後継者で、今は手の届かない立場の男が、こんな小さなことを日常的にするはずがない。

それなのに――指先だけが、...

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