第25章

扉板に耳を寄せた、その瞬間だった。――チリリリ、と着信音が鳴り、安野香苗は驚きのあまり、反射で扉を押し開けそうになる。

だが幸い、安野月子は着信に気を取られ、扉の向こうの気配には気づかなかった。

「……あのクズ、どうなった?」

相手が何を言うかなど聞かずとも分かっている。金田智哉の安野香苗への憎しみは骨の髄まで染みついている。あいつの手に落ちた以上、死ななくても碌な目には遭わない。

そう思うだけで、月子の胸は妙にすっとした。陰気な笑みを口元に貼りつけたまま、受話口からくぐもった、疲れ切った声が流れ込んでくる。

その瞬間、笑みが凍りついた。

「……は? あんた、香苗が金田の手から無...

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