第44章

「翔太!」

病室の扉を押し開けるなり、江原司が叫んだ。

ベッド脇で翔太に付き添っていた安野香苗は、振り返って低く言う。

「外で話して。翔太を起こさないで」

翔太は彼女にとって最大の弱点だ。江原司をどれほど嫌っていても、子どもの前で言い争う気にはなれない。

江原司もさすがに後ろめたいのか、言い返さずに頷き、病室を出た。

廊下に出ると、江原司が申し訳なさそうに近づいてくる。

「香苗、ごめん。翔太が熱出してるなんて……昨日、電話に気づかなかった。殴っても罵ってもいい」

――また、それ。

何か起きるたび、江原司は甘い言葉で謝るだけ。

自分がまだ、彼を愛していた頃の安野香苗だと思っ...

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