第45章

安野香苗の悔しげな言葉を聞き、翔太はふっと動きを止めた。それから、そっと彼女の手を握る。

「お母さんは悪くないよ。ぼくが病気になったとき、ずっとお母さんが看てくれたもん」

幼い言葉は拙いのに、胸を打つほどまっすぐだった。

その一言だけで、安野香苗の心を覆っていた暗い靄が、すうっと晴れていく。

思いがけない優しさに胸が熱くなり、同時に、どうしようもなく愛おしさが込み上げた。

安野香苗は慈しむように翔太の頭を撫でる。

「私はお母さんなんだから。翔太が具合悪いときに、お母さんが看病しないわけないでしょ」

その腕の中に身を預けながら、翔太はひどく懐かしいぬくもりと安心を感じていた。

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