第55章

乾いた平手の音が響き、安野月子の顔が横に弾かれた。

「このクズ……よくも私を殴ったわね!」

打たれた頬を押さえた月子は顔を歪め、甲高い叫び声を上げながら安野香苗へ飛びかかる。だが香苗は身軽に身を引き、あっさりとかわした。

「殴って当然よ! 自分の欲のために、家の人間まで巻き込んで私を陥れた。叩かれて当たり前でしょう」

――証拠さえ手に入れて、さっさとここを出られるのなら。

本音を言えば、もう何発か叩き込みたかった。

香苗を睨みつけ、月子はますます毒々しく罵る。

「クズのくせに! あんたのものが全部、私に奪われたのは自業自得よ!」

今の月子は、完全に喚き散らす女そのものだった。...

ログインして続きを読む