第61章

「翔太、本当にお母さんと一緒に帰るの?」

 昨日、翔太が口にした言葉を思い出しながら、安野香苗は迷った末にもう一度だけ確かめた。

 江原司がしてきた数々の身勝手な振る舞いには、正直うんざりしている。けれど、子どもと父親の間で交わされた約束まで、母親の都合でねじ曲げたくはなかった。

 だからこそ、翔太の意思を尊重する。――そう決めている。

「うん。お母さんと帰る」

 翔太はこくりと頷き、迷いのない声でそう言った。

 その瞬間、江原司と安野月子の空気がぴしりと固まった。

 真っ先に動いたのは月子だ。すぐさま前へ出て、声を荒らげる。

「翔太、昨日は今日、お父さんのところに帰るって約...

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