第64章

傍目にも分かった。野原民が機嫌よく応じたのは、娘が翔太と遊んで楽しそうにしていたからでもある。

取引を受けたのも、子どものことを思っての情けが少しはあったのだろう。

そのことは、藤原京也も安野香苗も分かっていた。

そこまで言われてしまっては、安野香苗もこれ以上は断れない。

断れば、かえって角が立つ。

気づけば、終業時間も間近だった。

翔太は午後じゅうずっと藤原京也の執務室で過ごしていた。仕事の報告にやって来る幹部たちは、その姿を見てみな目を丸くする。

それが安野香苗の息子だと知ると、胸の内に微かな含みを抱いた。

やはり藤原京也にとって、安野香苗は特別なのだろう。執務室を隣に置...

ログインして続きを読む