第66章

安野香苗が、まさかそこまで情け容赦のないことを言うとは思わなかったのだろう。江原司の顔が、ぴたりと強張った。

酒もいくらか醒めたらしい。

『警察の方、これは全部誤解です。俺とこいつは――』

言い訳を最後まで口にする前に、警察官が冷えた声で遮る。

『深夜にここまで泥酔した状態で、たとえ夫婦でも、相手の意思に反して無理やり性行為に及べば立派な犯罪です。署まで同行してください』

ほどなくして、江原司は警察に連行された。

リビングがしんと静まり返る。

安野香苗は糸が切れたように、その場へずるずると崩れ落ちた。

床には、まだ花瓶の破片が散らばっていた。そこにこびりついた血――さっき、江...

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