第69章

幸島庄司は怒気を含んだ声で、苛立たしげに妻を睨みつけた。

安野香苗も、この騒ぎにはさすがに面食らう。自分はただ藤原京也に同行し、幸島庄司と提携の話をしに来ただけだ。

それなのに、いきなりこの女が乗り込んできて「浮気相手」呼ばわり。挙げ句、物を投げつけようとしてくるなんて――正気の沙汰じゃない。

幸島庄司が「嫁さん」と呼んだことで、安野香苗はようやく理解した。

……この人が、幸島庄司の奥さん。

『来なかったら、あんたが他の女と一緒にいるところなんて見られなかったでしょ! あんなに近くで……ねえ、正直に言いなさいよ。あの女のこと、好きになったんじゃないの!?』

女は興奮したまま詰め寄...

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