第70章

車のフロントは壁に突っ込み、ほとんど潰れかけていた。なのに運転席の女は諦めない。ハンドルを切り直し、再び安野香苗へ狙いを定めると、アクセルを踏み込んで容赦なく突っ込んできた。

安野香苗の顔色がさっと変わる。咄嗟に身を翻し、植え込みの向こうへ逃げ込んだ。

次の瞬間、車体がガツンと音を立て、緑地の縁石に乗り上げて引っかかった。前へ出られない。

藤原京也はそれを見るなり、自分の腕の痛みなど気にする余裕もなく、植え込みの裏へ駆けた。

『香苗!』

呼ばれた瞬間、香苗の膝が抜けたように崩れ、彼の方へ倒れ込む。藤原京也が素早く受け止め、しっかりと支えた。

香苗の目には、あの車の女の姿が焼きつい...

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