第85章

安野香苗は男の腕にもたれ、彼の手から温い白湯を数口含んだ。

飲み終えてから、ようやくはっとする。

病室には、まだ江原お爺さんがいる。自分と藤原京也は、あまりにも近すぎた。

まだ江原司とは離婚も成立していない。

祖父が妙なふうに受け取らないだろうか――そんな不安が胸をよぎる。

香苗の気持ちを察したのだろう。江原お爺さんは、くつくつと喉の奥で笑った。責める色は、欠片もない。

『今、こうしてお前を気にかけてくれる人がいる。それだけで、爺さんは嬉しいんだ。気まずがることはないよ』

土に半分足を突っ込んだような年寄りとはいえ、若い者同士の機微くらいは分かる。

この子には、どうか幸せにな...

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