第89章

介護士はそう言い終えると、手際よく食器を一式持って戻ってきた。三人で病室の中、簡単な夕食を済ませる。

その光景は、まるで――この三人こそが家族みたいで。

食後、翔太は病室に残った。江原司も安野月子もいないせいか、空気は妙に軽い。

藤原京也が食べ終えるなり病室でノートパソコンを開き、仕事を始めたのを見て、安野香苗は口を開いた。

『毎日来なくてもいいのに』

藤原ほどの大企業なら処理すべき案件は山ほどある。藤原京也自身も、忙殺されて当然の立場だ。なのに入院してからの数日、彼は会社と病院を行き来し、時にはここで夜を明かすことさえあった。

ありがたい。心から。

ただ同時に、その恩を返しき...

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