第9章

安野香苗は、もう彼女を甘やかさなかった。反手でぱん、と平手打ちを叩き込み、掴まれていた手首を力任せに振りほどく。

安野月子はバランスを崩し、みっともなく床へ転がった。

「安野香苗……死ね!」

顔は完全に歪み切り、憎悪に濁った目で香苗を睨みつける。まるで今すぐ噛み裂きたいと言わんばかりの陰惨な表情。

香苗は見下ろしたまま、壊れたように荒れるその姿を眺め、紅い唇で嘲る弧を描いた。

――それでいい。

彼女はテーブルの上のウェットティッシュをゆっくりと裂き、さっき月子に触れた指先を丁寧に拭う。消毒するみたいに、念入りに。

露骨すぎる嫌悪の仕草が、月子の神経をさらに逆撫でした。

「この...

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