第93章

安野香苗は慌てて翔太を自分の後ろへやり、「二人とも、やめて!」と叫んだ。

幼稚園の門の前は人通りが多い。揉み合う姿を、周りの保護者や通行人が次々に見てしまっている。

こんな場所で殴り合いなんて、何をやっているのか。

香苗は駆け寄って藤原京也の腕を掴み、必死に引き離す。

「先輩、もうやめて! 江原司、あなたも手を離して!」

あまりに強い口調だったせいか、江原司も藤原京也も、ぴたりと動きを止めた。

二人の顔には、薄く青あざや切り傷が浮いている。

「先輩、大丈夫ですか?」

藤原京也の口元が切れているのを見て、香苗は思わず声を落とす。

京也は彼女の心配に気づいたように、小さく首を振...

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