第97章

安野月子の顔つきを見れば、あれだけ痛がっているのだから、演技には見えなかった。

安野香苗にそう言われて、江原司もようやく腑に落ちたらしい。

オークション会場のスタッフがすでに場内の医師を呼んでおり、安野月子の状態をひと通り診た医師が口を開く。

『……このお嬢さん、足首を強くひねっていますね。骨にひびが入っている可能性が高いです。すぐ病院へ』

『なに? ひび?』

江原司が信じられないという顔で聞き返す。医師は応急処置をしながら、こくりと頷いた。

『ええ。見たところ、軽くはありません』

医師に処置を任せたまま、江原司は首だけを回し、その鋭い視線を刃のように安野香苗へ突き刺した。

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