第114章

近藤永一は株式譲渡書類を見つめたまま、表情一つ変えなかった。だがその下唇は強く噛み締められ、手は微かに震えている。

周防浅奈は彼に「名分」を与えるために、周防グループの全株式を彼に譲渡したというのか?

近藤永一は金を持っていた。腐るほどの金を。だが、これほど重みを感じた金はかつてなかった。

彼は顔を上げ、笑みを湛える周防浅奈を見つめた。

まるで幼い頃に戻ったかのようだ。自分を庇ってくれたあの少女が、また彼の元へ帰ってきたのだ。

「奈々」

彼が何かを言おうとした瞬間、周防浅奈がその唇を塞いだ。

今日の周防浅奈は機嫌がすこぶる良かった。前世で自分のために命を投げ出してくれた男を前に...

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