第212章

「奈々」

近藤永一が歩み寄ってくるのが見えた。

その瞬間、周防浅奈は浅川逸が反射的に柱の陰へ身を隠すのを目撃する。まるで、彼に見つかるのを避けているかのように。

浅奈は記憶を巡らせたが、前世でも現世でも、浅川逸という人物との接点など思い当たらなかった。

だが、彼から漂う空気は不快そのものだ。

最近は不可解な出来事が多すぎる。警戒するに越したことはない。

「何を見ている?」

近藤永一が浅奈の腰を抱き寄せる。浅奈は慌てて首を横に振った。

「ううん、なんでもない。仕事は終わったの?」

「ああ、迎えに来た」

近藤永一は視線を天宮日那へと移した。

天宮日那は恐怖で全身の毛が逆立つ...

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