第26章

近藤永一が口を開いた瞬間、場は静まり返り、誰もが押し黙った。

近藤時弥は拳を固く握りしめていたが、彼と視線を合わせる勇気はなかった。

周防浅奈は以前、会社の経営に関与していなかった。彼女の両親が亡くなってからの数日間、近藤時弥は彼女の名義で多くの書類に署名させていたのだ。

会社の譲渡という重大事案でなければ、わざわざ周防浅奈に署名を求めたりはしなかっただろう。

だが、もし近藤永一が調査に乗り出せば、露見してしまう悪事が山ほどある。

彼が周防グループから横領した金額は、決して少ないものではないのだ。

彼は一つ咳払いをすると、途端に目元を赤く染めた。

「浅奈、僕はただ、君に辛い思いをさせた...

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