第29章

午後八時。周防浅奈の携帯電話は、もう何度鳴ったかわからないほど着信を知らせていた。

画面に躍る木島若凪の名前を眺め、周防浅奈は悠然とした手つきで通話ボタンを押した。

「何?」

「奈々! パーティーは八時からよ。みんなとっくに来てるのに、なんでまだ来ないの? どうしていつも時間を守れないわけ?」

受話器の向こうから、木島若凪の不満げな声が響く。

会場がスカイレストランだと聞きつけ、普段は木島若凪と疎遠な令嬢や御曹司たちまでこぞって集まっていた。

多くの者は五時過ぎには到着していたが、周防浅奈が現れないため、レストラン側は料理の提供を始めようとしない。

全員が空腹を抱えて待たさ...

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