第38章

二人は黙々と食事をしていた。早朝のレストランに人影はまばらで、片隅にいる彼らに注意を払う者はいなかった。

周防浅奈がふと顔を上げた。

「有季さん、隣のレストランに行ってナイフとフォークをワンセット買ってきてくれない? あのお店のロゴが入ってるやつね。あと紙ナプキンも」

近藤有季の脳内で瞬時に警鐘が鳴り響く。彼は警戒して周防浅奈を見た。

周防浅奈は瞬きをし、すぐに近藤有季が「彼女が逃げようとしている」と勘違いしたのだと悟った。

「やっぱりいいわ」

彼女は手を振った。

「ウェイターに行かせるから。すみません、ちょっと」

近づいてきたウェイターに、周防浅奈は一万円札を直接手渡した。

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