第68章

天宮日那が予想した、周防浅奈がその場に倒れ込むという事態は起きなかった。周防浅奈は後頭部に手をやり、指についた血を見た瞬間、二人の少女は凍りついたように動かなくなった。

「わざとじゃないのよ、これは正当防衛なんだから!」

天宮日那は脱兎のごとくドアへ駆け寄り、鍵をかけた上にチェーンまで掛けた。

こんなところを誰かに見られたら、言い逃れなんてできっこない。

激痛が周防浅奈の意識を一瞬にして覚醒させた。彼女は歯を食いしばる。

「ちょっと待って、まだドアを開けないで」

薬を盛られるこの感覚、嫌というほど知っている。まもなく彼女は理性を失い、欲望の玩具に成り下がるだろう。

前世、周防浅奈は幾...

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