第79章

「ほら、先に渡しておくよ」

近藤時弥は甘い眼差しを彼女に向け、手提げのケースを取り出した。

中には数十点ものジュエリーが整然と並べられており、その中央にはダイヤモンドの十字架が鎮座している。

「奈々、これで足りるかわからないけど……向こうも隠し立てするような真似はしないはずだ。確認してみてくれないか」

近藤時弥はケースをそのまま彼女の方へ押しやった。

心の中では血の涙を流しながらも、彼は笑顔を崩さなかった。

「あの看護師も、少し魔が差しただけなんだ。悪気があったわけじゃないし、物は売られずに済んだんだから、今回は不問にしようと思うんだが」

周防浅奈は無言のまま、真剣な眼差しで品定めを...

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