第91章

周防浅奈が立ち去るのを見届けると、木島若凪はようやく安堵の息を吐き、心の中で「この間抜けが」と毒づいた。

これから皆が自分に恩義を感じてくれるのだと想像すると、木島若凪の心は高揚感で満たされた。

彼女は咳払いをして喉を整えてから、電話に出た。

「時弥」

「近藤永一が今日急にいなくなったのは、そっちに行ったからか?」

近藤時弥の声には微かな笑意が含まれていた。

「あれだけでかいプロジェクトをあっさり手放すなんてな。お陰で俺にチャンスが回ってきたよ」

「当然でしょ。私がついてるんだから、大船に乗ったつもりでいていいわよ。それに、明日は彼も帰らざるを得なくなるし」

木島若凪は声を潜...

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