第92章

木島若凪は彼が来るのを見ると、すぐに周防浅奈の方へ歩み寄った。

「奈々、さっきは近藤様がいたから言えなかったけど、これ、あたしからのサプライズ。嬉しいでしょ?」

彼女はそう言って、周防浅奈の体を軽く小突いた。

近藤時弥は薔薇の花束を抱え、笑顔で周防浅奈の前に立った。

「奈々、ごめんよ。今日は会社の仕事が立て込んでて遅くなった。怒らないでくれるかい? 君が待ってると思って、急いで片付けてきたんだ」

その口ぶりは、まるで周防浅奈が彼を招待したかのようだった。

周防浅奈は花を受け取らず、半歩後ずさりして周囲を見回した。近藤永一に見つかって怒られるのを恐れたのだ。

幸い彼の姿はなく、彼...

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