第10章 本当に人を誘惑するのが上手い!

中村奈々が到来してから、オフィスには張り詰めた空気が漂い始めた。太陽の光すらその雰囲気に圧されたかのように、幾分か色褪せて見える。

黒田謙志は、仕立ての良いダークスーツに身を包み、その高身長で引き締まった体躯が完璧に浮かび上がっていた。

彼の顔立ちは彫刻のように輪郭がはっきりとしており、鋭い眉はわずかに吊り上がり、その深い瞳は冷淡さと威厳を湛えている。

中村奈々の様子を見て、彼はわずかに眉をひそめた。

「あら、中村奈々じゃない。そんなに顔色が悪いなんて、昨日の晩は何してたのかしら? まさか、何か人に見せられないようなことでもしてたわけ?」森田杏莉が冷ややかに言い放つ。その声は大きくも...

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