第239章

「過去形です」中村奈々は間髪入れずに訂正した。

「……」

黒田謙志は深く息を吸い込み、波立つ心を必死に鎮める。

「はは」やがて、彼は短く笑った。「なら、きっちり清算させてもらおうか」

中村奈々は即座に警戒心を露わにする。「清算って? 以前助けていただいた借りは、もう返しました」

彼のために尽力したあの日々を鮮明に覚えているのに、彼にとってはただの過去の出来事だというのか。

黒田謙志の瞳が、いっそう暗く沈む。

「俺の時間は貴重だと言ったはずだ。秒単位で金が発生する。大袈裟な話じゃない」

「……そうですね」

「重要会議を中断してまで駆けつけたんだ。この損失、どう埋め合わせるつも...

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