第240章

黒田謙志は中村奈々を一瞥したが、彼女の視線は彼を完全に素通りしていた。

彼は眉を顰めると、ドアを開けて外へ出た。

その時ようやく、森田美波が中村奈々の方を向き、遠慮のない視線で彼女を頭のてっぺんから爪先まで品定めするように見回した。

「手助けなんて、必要ないわよね?」

中村奈々はあくまで彼女など存在しないかのように振る舞っていたが、話しかけられて初めて、ゆっくりと視線を戻した。そして、浅い笑みを浮かべる。

「ええ、必要ありません。ですから森田さんも無理なさらないでください。ここに居座られても、お互い不愉快なだけですから」

森田美波は慌てる様子もなく、自分の名刺を取り出して差し出し...

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