第248章

「あちらの家の事情は、お父さんのほうが私よりよっぽど詳しいんじゃない?」

 沈黙が返ってきた。

 図星だった証拠だ。

 父さんが黒田美紀子にどんな思いを抱いているのか。昔ならいざ知らず、今となっては痛いほどよくわかる。

 中村良太郎はまさに働き盛り。創業こそ苦難の連続だったようだが、会社をここまでの規模に育て上げた手腕は誰もが認めるところだ。

 加えて今の彼は、大人の男としての渋みも増し、容姿も悪くない。名家の令嬢や美女たちが後を絶たないとも聞くが、そのすべてを袖にしているらしい。

 中村奈々にはわかっていた。彼には、ずっと心に決めた人がいるのだと。

 二人がなぜ結ばれなかった...

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