第259章

かつては憤怒の形相を浮かべていたその若い男は、彼女の言葉を聞いた途端、まるで雷に打たれたように呆気にとられ、立ち尽くした。

「あ、いや……あんた、その……」

水原瀬那が病室に入ると、中村奈々がベッドの上で笑い声を上げていた。

「呆れた。あなたねぇ、まだ痛い目に遭い足りないの?」

彼女は歩み寄り、奈々に水を注いでやった。

奈々はニコニコと瀬那を見つめ、しばらくしてから口を開いた。

「ふふ。でも急に思ったの。今のあなた、すごくいい感じだなって」

瀬那はうつむき、ふっと小さく笑う。

「今の人生は全部あたしのものだからね。誰に気兼ねする必要もないし、誰かの責任を負うこともない。そりゃ...

ログインして続きを読む