第284章

二人の距離はあまりに近い。周囲の同僚たちがいくら首を伸ばし、耳をそばだてても、その会話の内容までは聞き取れなかった。

だが、その親密な空気感を見れば、ただならぬ関係であることは誰の目にも明らかだった。

黒田謙志が去って間もなく、山本大賀が戻ってきた。彼は声を張り上げる。

「黒田社長から、皆さんへの差し入れです」

その声と共に、オフィスは歓声に包まれ、デリバリーが運び込まれる。

皆が浮き足立ってコーヒーを手に取る隙を突き、山本大賀はこっそりと中村奈々の席へ近づくと、一杯のミルクティーをそっと置いた。

それは彼女が一番好きな銘柄で、トッピングもたっぷり入っている。ストローでくるくると...

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