第296章

午後七時。光岡和哉が会社を出るやいなや、ビル下の路上で待ち構えていた中村奈々の姿が目に入った。

彼女は颯爽とした手つきでヘルメットを放り投げ、小気味よく叫んだ。

「乗って!」

光岡和哉の視線が、彼女の背後にある小ぶりな車体へと注がれる。その顔には、何とも言えない奇妙な色が浮かんでいた。

「迎えに来るとは聞いていたが……まさか、これで行く気か?」

「この時間の西京の渋滞、なめてる?」

中村奈々は茶目っ気たっぷりの猫耳ヘルメットを被ると、軽やかにシートへ跨り、ポンと後部座席を叩いた。

「親友に借りてきたのよ。見た目で判断しないで。これ、結構速いんだから」

光岡和哉は手元の犬耳付き...

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