第31章 安心して

中村奈々は少し躊躇ったが、正直に認めた。「はい」

「どこの病院だ?」高橋文也はさらに尋ねた。

中村奈々は一瞬言葉を詰まらせたが、やはり本当のことを告げた。「新田病院です」

高橋文也はしばし黙り込んだ。「待ってろ。後で会おう」

「えっ、高橋先生、高橋先生!そんなご無理なさらずとも……」中村奈々は叫んだ。

だが残念なことに、電話はとっくに切れていた。

中村奈々は仕方なくため息をつき、携帯電話をしまった。

三十分後、高橋文也はダークグレーのスーツに身を包み、金縁の眼鏡をかけて病室の前に現れた。

手には百合の花束と果物のバスケット、そして数冊の本まで持っている。

中村奈々は彼が眼鏡...

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