第44章 どうしてさっき助けを求めなかったのか

渡辺直樹は酒の勢いを借り、脂ぎった肥満の顔に下卑た笑みを浮かべた。「中村秘書、そんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃないか。俺のものになれば、気持ちよくさせてやるから」

そう言うなり、渡辺直樹はトイレのドアを閉め、中村奈々の胸元に手を伸ばしてきた。

中村奈々は悲鳴を上げ、慌てて胸元を覆い、必死にもがく。

「離して!」

力一杯もがくが、渡辺直樹の拘束からどうしても逃れられない。

渡辺直樹はへらへらと笑いながら、両腕で中村奈々を固く抱きしめた。

抵抗できない中村奈々は、必死に足をばたつかせるしかない。

しかし、か弱い女の身で、どうして肥満した大男に敵うだろうか。

黒田...

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