第52章 紹介しないのですか?

黒田謙志は僅かに目を細め、その眼底からは冷たい光が溢れ出ていた。

中村奈々は異変に気づき、声のした方へと視線を向ける。

黒田謙志が数人の部下を連れて入ってきた。黒いスーツに身を包み、その顔つきは冷たく険しく、眉間には氷霜が立ち込めている。

全身から放たれる陰鬱なオーラは、見る者を震え上がらせるほどだ。

あの日、彼に土下座して見逃してくれるよう懇願して以来、中村奈々は半月以上も黒田謙志に会っていなかった。

不意に彼を目にし、彼女の胸の内に動揺が広がり、思わず掌を強く握りしめる。

高橋文也は中村奈々が硬直しているのに気づき、つられるように顔を上げ、黒田謙志の姿を捉えた。

中村奈々の...

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