第57章 彼女のためにブライズメイドになる

「おめでとうございます、黒田さん。どうぞ、お幸せに」彼女は淡々と、抑揚のない声で言った。

黒田謙志は目を細める。「どうした、少しも妬けないのか?」

「妬く? どうしてです?」中村奈々は問い返した。

自分に、嫉妬する資格などあるのだろうか。

ましてや、彼に嫉妬することなどあり得ない。

黒田謙志の口元が、皮肉な弧を描く。「ふふ、随分とさばさばしているじゃないか」

「お褒めに預かり光栄です」彼女は卑屈になるでもなく、かといって傲慢になるでもなく答えた。

「それなら、杏莉がお前にブライズメイドを頼みたいと言っているが、断らないよな?」黒田謙志は眉を上げて尋ねた。

中村奈々は一瞬固まり...

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