第68章 謙志、あなたは中村奈々が好きですか?

物静かで優雅な気品を漂わせ、話すときは常に浅い微笑みを浮かべている。

これこそが本物のお嬢様だ。立ち居振る舞いはどこまでも淑やかで気品に満ち、言葉の端々からは親しみやすさと気さくさが滲み出ていて、人を心地よくさせる。

森田杏莉とは違う。彼女の言葉にはいつも棘があり、名門の家で育った令嬢とはとても思えない。

母親の森田恵は不倫相手から成り上がったと聞くし、それも当然か。

中村奈々は心中でそう思った。

そこまで考え、彼女は顔を上げて森田美波ににこやかに微笑みかけた。「森田さんのご提案、ありがとうございます。ただ、今のところ彼氏を作るつもりはないんです」

「それは残念だわ」森田美波は軽...

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