第72章 もうあなたたち‘家族’の食事を邪魔しません!

彼女が言い終わらないうちに、高橋文也がエビを一つ彼女の口に運んだ。「奈々、これ好きだろ。もっと食べな」

中村奈々は彼を見て、口元まで出かかった言葉を飲み込んだ。

やはり、後で話そう。

その時、一組の男女が彼らのそばを通り過ぎた。

高橋父は一目でそれが黒田家の長男、黒田謙志であることを見抜いた。

今や黒田グループは高橋家にとって第一のビジネスパートナーである。高橋父は慌てて立ち上がり、声をかけた。「謙志くん!」

中村奈々がその視線の先を追うと、なんと黒田謙志と森田美波の姿が……。

二人は足を止め、こちらに視線を向けた。

中村奈々が俯いているのを見て、黒田謙志の口元に思わず冷笑が...

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