第74章

中村奈々は呆然とした。

「君はまだ若い。ゆっくり時間をかけよう、いいかい?」高橋文也は言い聞かせるように優しく尋ねた。

高橋文也のその『君はまだ若い』という一言が、彼女の最後の防線を完全に打ち砕いた。

中村奈々は唇を噛みしめ、涙が頬を伝って流れ落ちる。彼女は必死に瞬きをし、内側から込み上げる痛みを懸命に抑えながら、か細く頷いた。「はい、わかりました」

高橋文也はティッシュを数枚彼女に渡した。「何を泣いてるんだ。俺は気にしてないのに、君が気にする必要なんてないさ。気持ちの整理がついたら、また返事をくれないか?」

中村奈々は頷き、手の中の箱に目を落とす。少し考えた後、やはりそれを高橋文...

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