第16章

ステージ上で、須藤郁夜はマイクに向かい、目元を赤く染めていた。涙をこらえているような、その姿が妙に儚げで――ひどく守ってやりたくなる。

彼女は客席をゆっくり見渡し、最後に視線を一点へ落とす。そこにいたのは、立花真淵。

声は、蜜みたいにやわらかい。

「本当は……この作品が今の形になったのは、ある人の支えがあったからです。私の人生で、いちばん大切な人。いちばん迷って、いちばん苦しかったとき――私に、もう一度立ち上がる勇気をくれた人です」

ざわっ、と会場が波打った。

無数の視線がいっせいに立花真淵へ刺さる。

立花真淵は表情を崩さないまま、周囲の囃し立てる空気を受け流し、静かに席を立った...

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