第55章

彼はきょろきょろと辺りを見回した。さっきまで新谷卿華が立っていたローマ柱の脇は、がらんとしている。人影ひとつない。

「申し訳ありません、アントニーさん。あのご令嬢、先ほどかなりお辛そうでした。限界で先にお帰りになったのかと……」

ルイは悔しそうにため息をついた。

スマホを取り出し、先ほど登録した番号を呼び出す。

「すぐお電話して、確認いたします」

発信音が長く続き、ようやく繋がった。

『……もしもし』

受話口から聞こえたのは、息も絶え絶えの、かすれた新谷卿華の声。

その声を聞いた瞬間、ルイの胸にあった焦りがわずかにほどける。同時に声音は一層恭しくなった。

「新谷様。先ほどの...

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