第63章
新谷卿華は抵抗をやめ、澄んだ瞳で冷たく彼を見返した。
「死にゃしないわ。立花社長のご心配には及びません」
その耳障りな「立花社長」が、針みたいに立花真淵の神経を刺した。顎のラインがきゅっと強張り、瞳の奥に押し殺していた暴力的な色が、もう隠しきれない。
真淵はふいに身を屈め、獲物に噛みつくみたいに彼女へ迫る。距離は一瞬で詰まり、吐息が絡むほど――艶めいて、息が詰まる。
「立花社長、ね」
掠れた低い声。熱のある息が耳朶を撫で、危険な匂いを含む。
「前はベッドの上で、もっと甘く呼んでたくせに。どうして今は『あなた』って言わない?」
新谷卿華の全身が、びくりと固まった。瞳孔がきゅっと縮...
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