第52章 彼女に恋したのか?

「愛?」

国分礼二は、世界一くだらない冗談でも聞かされたみたいに鼻で笑った。

「お前に、その言葉を口にする資格があるのか?」

見下ろす視線の奥には、むき出しの嘲り。

「昔、お前がどうやって消えたか忘れたのか。あの金のため、海外の身分のために、迷いもなく俺を捨てたくせに。いまさら戻ってきて愛だと? 名取心美……気持ち悪くならないのか?」

「違う……っ!」

名取心美の防波堤が、音を立てて崩れた。顔を覆い、息が詰まるほど泣きじゃくる。

「私じゃない! 私、してない……おじい様よ! おじい様に追い込まれたの! お父さんが遺してくれたギャラリーを盾にされて……礼二と別れないなら、星見市で...

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