第118章

山田澪は、「ありがとう、もう大丈夫」と手話で伝えた。

「よかった」北村誠は口元に微笑みを浮かべ、視線をコーヒーテーブルの上の薬包に向けた。「義姉さん、体調が悪いの?」

山田澪はテーブルの上の薬を手早く掴んで、コーヒーテーブルの下の引き出しに押し込んだ。「ちょっとした風邪だけ」と手話で答えた。

北村誠は頷いた。「風邪でも注意しないと。この季節のインフルエンザは結構厳しいからね」

山田澪は唇を引き締め、彼をじっと見つめた。彼には帰る気配がないようだった。

彼女は手話で「北村健は夏目彩と一緒にいるから、きっと帰ってこない」と伝えた。

その裏には「早く帰って」という意味が込められていたが...

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