第163章

北村健は終始沈黙を保っていた。

後部座席で騒いでいた夏目彩は疲れてきたが、不純なお酒を飲んだせいで、もぞもぞと体を動かし、時折声を漏らしていた。

どんな男でもこれを聞いたら我慢できないだろうが、北村健はずっと無表情で、動じる様子もなかった。

彼は車を病院まで運転し、降りると、ドアを開けて夏目彩を抱き出した。

「健…苦しい」夏目彩は彼の首筋に手を這わせ、胸に身を寄せながら、レーダーのように男の唇に自ら近づいていった。

「あなた、私のこと愛してる?…」

「大丈夫、責任取ってなんて言わないから…あなたが欲しい…」

「何もいらない、あなただけでいいの...」

北村健は眉をひそめ、彼女...

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