第167章

北村健の動きが一瞬止まり、高橋小春を見上げた。

高橋小春は平然と立ち、口元には職業的な微笑みを浮かべ、まるで通常の業務を遂行しているだけのようだった。

北村健は問い返した。「では高橋秘書の意見は?」

高橋小春は一瞬たじろぎ、言った。「北村社長、私はただ起こりうる状況についてご報告しているだけです。どうするかは当然、北村社長のおっしゃる通りにいたします」

「なら私の言った通りにしろ」

「はい」

高橋小春は軽く頷いた。「では彼女に一ヶ月分の休暇届を出しておきます」

「下がれ」

高橋小春は身を翻して部屋を出た。ドアの所まで来て、閉める時に北村健を見上げた。

彼は目を伏せ、手元の書...

ログインして続きを読む