第172章

「どうでもいい。言いたくないなら言わなくていい。お前が移した資産は、自分で何とかして吐き出せ」北村健はそっけなく言った。

誠はそれを聞いて思わず笑った。

「兄さん、そんな言い方でいいんですか?」

「北村誠、それは俺の言葉じゃない。お前にはわかっているはずだ。俺とここで時間を無駄にする必要はない。録音はしていない」

北村誠はタバコを挟んだ指が一瞬止まった。車に乗ってからずっと、北村誠は彼との会話で細心の注意を払っていた。

北村健が先に弱みを見せない限り、彼は多くのことを言わなかった。注意して聞けば、彼の言葉はすべて北村健の言葉に追随していることがわかる。

彼は確かに北村健のポケット...

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