第21章

「健、どうしたの?ぼーっとして」夏目彩は車に乗ってからしばらく経つのに、彼はずっとタバコを吸っていた。もう二本も吸ったのに、車はまだ駐車場から動いていなかった。

北村健は最後の一服を吸い終え、残り半分を窓の外に投げ捨てた。彼は横を向いて夏目彩を見た。

「足の具合はどうだ?」

夏目彩は口をとがらせた。「忙しいあなたが私の足のこと覚えてるなんて、まあ死にはしないわよ」

彼女はまだこの件について根に持っていた。この機会に大げさに騒ぎ立てようと思っていたのに、こんなにあっさり終わってしまうなんて。あの唖の方は何の反応もなかった。

「今はお前をなだめる気分じゃない。何か食...

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