第37章

「俺、先に行く」

北村健はそう言い残して振り返りもせずに去っていった。夏目彩は怒りで飛び上がりそうになり、「健!」と叫んだ。

しかし、男は一度も振り返らなかった。

夏目彩は怒りで頬を膨らませた。彼女は病院から戻ったばかりで、この嫌な男は彼女を慰めることすらしなかった。

北村健は車を運転してレストランに向かったが、到着した時にはすでにレストランの灯りは消えており、中は真っ暗だった。

彼は車の中に座り、暗闇の中のレストランをじっと見つめていた。しばらく沈黙した後、携帯電話を取り出して山田澪に電話をかけた。

しかし、電話は電源が切れていた。

彼は苛立ちを感じながらタバコを取り出し、火...

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