第83章

山田澪は唇を引き締め、身を翻して退出した。

洗面所に向かうと、中で手を洗っている北村誠の姿が目に入った。

北村誠は彼女を見ると、ペーパータオルを二枚引き抜いて手を拭いた。「どうぞ、もう終わったから」

山田澪は微かな笑みを浮かべ、頷いて中に入った。

「床が少し滑るから、気を—」「つけて」という言葉が口から出る前に、山田澪は後ろに倒れかけていた。

彼女は慌てて何かに掴まろうとし、混乱の中で北村誠の腕を掴んでいた。

北村誠は機敏に手を伸ばして彼女を受け止めた。彼の手が彼女の腰に回り、極めて艶めかしい姿勢で、山田澪は彼の腕の中に倒れ込んだ。

山田澪は彼の腕をしっかりと掴み、顔を上げると...

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